昨年の高校三年生の5000mPB上位50人の中で彼らが高校二年生時の箱根駅伝でシード権を獲得した大学に進学した選手がどれくらいいたか知っている方はどれくらいいるだろうか。私は知らなかったため調べてみた。答えは37人である。そして実業団に就職した選手が4人。つまり彼らが高校二年生時の箱根駅伝でシード権を獲得できなかった大学に進学した選手は僅か9人なのである。このシード権を獲得した大学とシード権を獲得しなかった大学の差は年々広がっている。このとき何が起こるか。一番最初に考えられることは箱根駅伝でシード権を獲得する大学が固定されるということである。という訳でその点から考慮して進めていく
最初にスカウトの結果実力者が入り、シード権を獲得。更には駅伝での優勝、または狙える位置まで上り詰めた大学を紹介したい
今、真っ先に挙げられる大学は
青山学院大学である。40年以上シード権から遠のきながら、シード権を獲得してから僅か5年で箱根駅伝優勝まで上り詰めているのである。最大の要因はスカウトと断言する。原晋監督の画期的な練習も要因の一つだろう。しかしスカウトの占める割合には及ばない
その理由としてかつて予選会を突破していなかった時期に(当時)高校トップレベルの選手であった大谷遼太郎選手の入学、シード権の獲得すらしていなかった時期に(当時)5000mで13分台を出した竹内一輝選手が入学している。箱根駅伝予選会に参加していた大学としては破格の好スカウトである。更に第92回箱根駅伝で優勝したときの4年生は同学年では最高のスカウトであった。そして今の選手たちも同学年では3本の指に入るスカウトだ。これだけのスカウトを行った大学が箱根駅伝で優勝しているという現実からもスカウトが大きい割合を占めるということが分かる
次に忘れてはならないのは
東洋大学の存在である。箱根駅伝では
青山学院大学を上回る4度の優勝を誇る名門校である。この快進撃の要因もまたスカウトと断言する
思えば
東洋大学の快進撃は柏原竜二選手の入学から始まったと言っても過言ではない。箱根駅伝でのシード権を争っていた大学に当時の高校生の中でトップクラスのスピードとロードでの強さを兼ね備えていた選手が入学したのだ。そして登りでの強さが(当時)箱根駅伝の最長区間であった5区と上手くマッチしたのである。その結果柏原選手の存在を知った、かの有名な設楽啓太選手、悠太選手。高校時代に13分台を出した服部勇馬選手、弾馬選手兄弟をはじめとした世代トップクラスのスピードを誇る選手をスカウトしている(他にもいるが割愛)
現3年生以下の世代の選手も毎年のように他大学と比べて上位に位置する好スカウトを誇り、上位戦線に残り続けている。これは箱根駅伝で優勝した際に強いインパクトを残しているからだ。選手が育つことは前提であるが、強さの礎にはスカウトが大きな割合を占めているという事実は明確であろう
そしてスカウトを語る上で欠かせないのは
東海大学の存在である。
東海大学のスカウトは年々良くなっており、最も顕著に現れたのは昨年のスカウト(
今年度の大学新入生トップ3(後編)を参照)である。この記事から5000mPB上位50人から大学に進学した選手のうち、約2割の選手をスカウトしていることが分かる。これは先ほど述べた2校を遥かに凌ぐスカウトである。しかしながらこの世代だけが強い訳ではない
箱根駅伝の出場すら危ぶまれていた時期に(当時)高校トップクラスの選手であった廣田雄希選手の入学、箱根駅伝でのシード権を獲得していなかった時期に(当時)5000mのPBで世代トップのタイムを誇った湊谷春紀選手の入学という他大学では考えられないような好スカウトを実現させた延長線上に今の大学一年生のスカウトがある
スカウトの好転とともに成績は年々向上している。箱根駅伝でのシード権獲得はもとより、全日本駅伝で2年連続シード権獲得という東海大学初の快挙。さらには先日の出雲駅伝では9年ぶりにシード権を獲得したのだ。これはスカウトの好転が関係しているといえる。つまり史上最高のスカウトと言われる現大学一年生が学年を重ねるごとに三大駅伝での優勝に近付くのだ。
青山学院大学や
東洋大学が好スカウトにより常勝軍団へと上り詰めたように、
東海大学も常勝軍団への道を歩むだろう
ここまでは長々と好スカウトによる効果を書いてきたが(本当に書くべき大学は筆者である私が駅伝に興味を持った段階では既に強かったため、今回は省略とします…)スカウトだけで決まらない大学もある。その例を挙げよう
そう考えると、考えられる大学は
帝京大学だろう。
帝京大学は5000mのPB上位50人のうちから1~2人入ったら良いスカウトと言われるほど高校時代に強かった選手は入学しない。しかし箱根駅伝では毎年のようにシード権争いまたはシード権獲得を達成している。これまでの大学の例とは真逆である。何故だろうか
帝京大学の主力選手は殆どが3、4年生である。ここ数年は1、2年生も絡んでいるものの即戦力と言われる選手は少ない。つまり2~3年間かけて駅伝で通用するように選手をじっくりと育て上げているのだ。この点におけるメリットはスピードこそ他校の選手に及ばないものの、スタミナ面では安定するということだ。そのため
帝京大学の選手は目立った失敗をせずに実力通りに走りきる。これは長距離において、簡単なようで難しいものである。そのような「強さ」を求める高校生が可能性に懸けて入学するのである。スカウトした高校生が強ければ上位に食い込むわけではない。大切なのは選手のレベルに合わせた練習を行うということが分かる。
強い選手がいる大学が勝つ。正しいことのように思われるが、それだけで大学駅伝は語ることはできない。各大学ともに戦略を考えることで入学時に格上と言われた大学を逆転することもある。今の高校生たちは情報リテラシーを活用できるため、大学名だけではなくそういう点も大学を選ぶために考慮してほしい